「時計じかけのオレンジ」の話です。
ここ数年自分の中で再評価が高まっているスタンリー・キューブリック監督。
半年ほど前に名画座で「博士の異常な愛情」と「時計じかけのオレンジ」をスクリーンで鑑賞する機会に恵まれました。やはり劇場の暗闇で、作品だけに集中するというのはいいものですね。自宅で気楽にDVDで鑑賞するのもいいのですが、色々と集中力を削ぐ要素がありますから。
「時計じかけのオレンジ」は中学生か高校生くらいの頃が初見でしたが、派手な暴力描写があるというのを宣伝文句にしていた割にはたいしたことないなという印象でした。そう、比較的おとなしい作品に思えたのですね。まぁ、暴力映画はたくさんありますから。
ただ、歳を重ねるうちにキューブリック監督のお約束ネタ(多用される一点透視法や「The Kubrick Stare」と呼ばれる、登場人物が画面を睨みつけるショットなど)や、きっちりと世界を作り上げてくる姿勢に魅了されるようになりました。そうすると、「時計じかけのオレンジ」などは、どこを切ってもキューブリック印の名作映画なのがわかってきたのです。
個人的にはこの作品はギャグがわかりやすい。そして、画面がやたらとポップである、といった点が気にいっております。
また、作品中でパーセル「メアリー女王の葬送のための音楽」という曲が、繰り返し流れるのですが、主人公のアレックスが映画の挿入曲として流れている同曲を口笛でハモるという演出がされており、これはとても面白いなと感心した次第です。登場人物が挿入歌に絡むというショットはなかなか見たことがないもので。
そのようなわけで、キューブリック監督の作品は「時計じかけのオレンジ」と「2001年」あたりを押さえておくと、いわゆる映画ファンと話をした時に馬鹿にされずに済むかと思われます。
なお、いまだに世界中の映画ファンに愛され続ける「微笑みデブ」が登場する「フルメタル・ジャケット」も改めて見直したいと思っているのですが、いまだかなわず。
つきましては、お勧めするかどうかは保留にしておく次第です。