2022.02.08
春日神霊の旅 ―杉本博司 常陸から大和へ
金沢文庫にて、春日信仰をテーマにした展覧会が開催されていた。春日信仰に興味があるというよりは、杉本博司がかかわっているということで興味があった
杉本博司の入口は江之浦測候所だった。広大な敷地にそれぞれに時代を経た自然物や建造物が収集されている。それは博物館のような陳列ではなく、むしろ大名が作る風光明媚な庭といった感がある。そのため、杉本博司については、写真家、美術家というよりは、風流人といった印象が強い。
その杉本博司が手がけた春日信仰についての展覧会。
展示内容は興味をひかれるものが多くあった。
とくにおもしろいと思ったのは、鎌倉時代につくられたものに、杉本博司が手をくわえた作品。時代を経たものに手をくわえるという行為が、歴史的な遺産を作り変えてしまうということにはならないのだろうかとも思う反面、破損したアイテムを修復し、あたらしい価値を与えるという行為として考えると、それはそれでありなのかもしれないと思った。破損した信仰の対象に手をくわえることによって、現代によみがえらせる、つまりは信仰を引き継ぐ行為ともいえる。
単純な修復という選択肢もあるが、手をくわえて作り直すという発想は、展覧会での出品作品としては斬新な発想で、個人的には好ましく思った。