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2022.07.04

ゲルハルト・リヒター展

リヒターの実物を見たことがなかったので、楽しみにしていた。
想像以上におもしろい展示で、ドイツ現代絵画の最高峰と呼ばれるだけはあると思った。

今回のみどころは、「ビルケナウ」という作品であった。
アウシュビッツの捕虜収容所の隠し撮り写真をもとに、リヒターが抽象画を描いた。三枚の抽象画が壁に掲げられている。反対側の壁に、その抽象画をプリントしたものが展示してある。それぞれの作品が展示してある横の壁は全面鏡になっている。つまり、0、現実のアウシュビッツ、1、隠し撮り写真、2、抽象画、3、抽象画のプリント、4、鏡にうつるそれらの作品、という4段階の反復・模倣が行われている。

芸術は現実の反復・模倣であり、さらには反復・模倣を繰り返すうちに情報は劣化し、そこにこめられた感情は消え落ちていく。
もちろん、リヒターはアート全体を現実の劣化版の模写でしかない、と訴えているわけではなく、現代がそういう時代だといっているのだろう。

救いのない作品ではあるが、モダンアートとはおおむねそういうものだ。それぞれの作家が知恵を出して、とんちを仕掛ける。作品のコンセプトを読み解いて、その表現のたくみさを楽しむ。

こういう展示を見ると、世の中にはまだまだおもしろいものがあるのだと思う。

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