残り時間あと僅か、ラシットさんを探し出せ!
20年以上前、中国シルクロードを横断中、新疆ウイグル自治区の区都ウルムチに立ち寄りました。
郊外に天池と呼ばれるエメラルドグリーンの奇麗な湖があり、同じ部屋の日本人と韓国人の3人で向かうことにしました。
最も便利で安上がりな方法が、現地旅行社のフリーツアーを使うことでした。
マイクロバスの往復のみで、現地に3時間ほど滞在するというもの。
目的地は標高の高い山の中にあるので結構時間がかかる。
湖の周りには遊牧民であるカザフ族のゲル(テント)が点在しており、休憩や宿泊ができる。
韓国人は日帰りだが、我々日本人は1泊しようと思っている。
しかし、近年お金の亡者となった遊牧民による悪質なぼったくりが横行しているようで、
唯一ラシットさんという人は信用できるという情報を持っていた。
ラシットさんのゲルのだいたいの位置も情報にあったので、見つけることが出来たらそのまま宿泊し、
見つけられなかったら韓国人と一緒にバスに戻って帰るということにした。
やっと着いた天池は写真で見るより美しく素敵な景色であった。
しかし、すぐにガラの悪い客引きが群がってくる。
時間が無いので湖の右手奥に向かって歩き始める。
景色は素晴らしいが人間の雰囲気が最悪で、正直帰りたくなってきた。
バスに戻る時間を考えると、あと残された時間は30分。ラシットさんはどこだ!
湖の反対側右奥という情報が正しければ、この先に見える右カーブをしたところで見つけられなければ万事休す。
そして、岩肌のカーブを曲がるといくつかのゲルが見えた。
外にいた女性にラシットさんのゲルか確認すると、奥さんのドートラハーさんだった。
何とか間に合った。宿泊したい旨を伝えるとゲルに案内してくれた。
ラシットさんは外出中とのこと。
宿泊しないので遠慮していた韓国人にも当然のようにお茶を出してくれた。勿論、タダで。
時間になって韓国人は戻って行った。
彼とは昨夜屋台で夕食を一緒に食べたけど、辛い物が苦手な韓国人でした。
1人息子のタムーが我々の荷物に興味津々で中を見ようとする。
その都度お母さんに叱られ、我々にも息子を叩けと言ってくる。
そして、遂にドートラハーさんがタムーを叩き、大泣き。
すると、息子をギュッと抱きしめ、泣き止む。
これを体罰と言われたら悲しいですね。
確か5歳くらいだったと記憶しているけど、とてもいい子です。(彼の名誉のため記しておきます)
夜になり、ラシットさんが帰宅して家族全員と食事をした。
ぼったくりの現状をとても嘆いていた。
外は満天の星空で、地上の汚れと対照的であった。
今はどうなっているのだろう。。。