「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」展
火薬を使ったパフォーマンスで有名なアーティスト。
展覧会で展示されているのは、火薬を使って作った絵画のような作品と、パフォーマンスの構想を描いた作品(企画書のようなものもあるが、ちゃんと火薬を使ってイメージを描いてあり、作品になっている)。
冒頭「火薬を使用したのは、若い自分が、社会的統制に対して反発心を持っていたからでもあるでしょう」と書かれていた。
彼はずっと日記を書いているようなので、この言葉は嘘ではないだろう。
そんな彼が北京オリンピックの開会式で花火のパフォーマンスを行ったのはなぜだろう。展覧会でもその時のことは展示されていて、オリンピックのあと「私には体制協力者というレッテルも貼られてしまったのです」という記載があった。このころ、彼は体制に対して反発心は失っていたのだろうか。この疑問に対する答えは提示されていなかった。
今回の展覧会では、上記のように、作品ごとにアーティスト本人による説明がついている。こんなに作品について懇切丁寧に説明している展覧会はあまり観たことがない。
モダンアートといえば、鑑賞者に作品を提示して、鑑賞者がそこから問いを発見する、というのが定番のやりとりだ。蔡國強がことこまかに説明をするのは、彼の活動の根底にあるのが、コミュニケーションだからだと思う。
作品の多くは「外星人」からも見えるように、という意図がある。だからスケールが大きい。「外星人」というと「シン・ウルトラマン」を思い出すが、蔡國強が想定している「外星人」はどういう存在なのだろうか。火薬というと破壊を連想する。
アーティスト自身は必ずしも破壊というニュアンスではとらえていないようだが、「《歴史の足跡》のためのドローイング」という作品などは、長い年月を経て形成された文明が一瞬で破壊される、というイメージを受け取った。そういった、社会に対する危機感などを火薬を使うアートで表現しているのだと思う。最近ではいわきでのパフォーマンスが話題になっていた。会場では、いわきとのつながりが紹介されていた。こういうこともあって、コミュニケーションというものをテーマにしている作家なのだ、という印象を持った。サン・ローランが作成した動画が圧倒的だったので、リンクを貼っておく。ハンス・ジマーっぽい音楽がまた良い。