奈良美智: The Beginning Place ここから
青森県立美術館で開催されていた。
今回は企画展だったが、もともと青森県立美術館には「あおもり犬」と「森の子」があるので、建物全部が奈良美智といった印象だった。
展示されている作品数は多すぎず少なすぎずといったところで、ちょうどよかった。
1.家
2.積層の時空
3.旅
4.No War
5.ロック喫茶「33 1/3」と小さな共同体
上記のテーマに沿って、1979年から2023年までの作品からチョイスされていた。ある程度奈良美智の作品を観ている人なら納得がいくテーマだと思う。
80年代の作品は現在とはテイストが違うのだが、人物の目はすでに今の目と同じなのが興味深かった。
一般的には、奈良美智はかわいくてポップな絵が人気なアーティストという位置づけになっているが、それではモダンアートの世界では相手にされないだろう。
それではなにが評価されているのだろうか、という疑問が以前からあった。
今回の展示を通じて感じたのは、初期衝動的な反発心や寂しさといった子どもの頃に持っていた「感情の根っこの部分」をそのまま表現できる、というところが斬新なのではないかと思っている。
この「売り」は強力だと思う。平面だけでなく、立体でも表現できるし、音楽や詩でも表現できる。アーティスト本人の感覚が鈍らない限り、なにをやっても奈良美智の作品になる。もちろん、「感覚が鈍らない限り」というのが大変なことなのだが。何十年もの間、初期衝動を失わずに活動し続けることができる人がどれだけいるだろうか。だからこそ、評価され続けているのだろう。
そういう観点から、今回の展覧会はいかに奈良美智がブレずに活動を続けてきたか、というコレクションであり、作風の変化や多様化はあれども、昔から奈良美智は奈良美智だったんだな、ということを一望できたのはよかった。
それにしても世界のお金持ちは戦争で儲ける人もいるだろうに、奈良美智のように声高に反戦を掲げて、ビジネス的には大丈夫なのだろうか、とも思う。
下世話な話、と思われるかもしれないが、モダンアートとはそういうものだし、やはり気になるところではある。