2024.12.09
田中一村展 奄美の光 魂の絵画
ゴーギャンのような南国の明るい絵のイメージがあるが、そこに至るまでのかなり険しい道のりを感じ取れたという意味で良い展覧会だった。
8歳から69歳まで、一生にわたる作品を展示している。
子どもの頃は神童と呼ばれた。プロ顔負けの水墨画が多い。その後も順調に成長し、藝大にストレートで合格。スポンサーもついていた。画家としては成功していたのだろう。
ただ、オリジナリティはほとんどなかった。展示してある作品を眺めていくと、ごくたまにいつもと違う感じの作品はあれども、基本的には記憶に残らない作品ばかりだった。
50代になり、奄美に移住する。
そこで突然オリジナリティを獲得する。
水墨画を描いていたことで、絹本着色という手法を用いていた。
だから独特の質感とサイズ感が出る。
そこに奄美の自然を描いた。
おそらく奄美はジャングルのように樹木が密集していたのではないか。
だからモチーフが画面を覆いつくすように配置されることになる。
これらの要素が田中一村のオリジナリティを生んだのだと思う。
幸運が重なったようにも思えるが、描き続けたからこそ獲得できたのだ。
絵がうまくてもオリジナリティがなければ、ただ絵がうまいだけ。
日本画はオリジナリティを打ち出すのが難しい。
伊藤若冲は特別な例だ。彼は絵そのものがオリジナルだった。
田中一村は若冲とはまた違う方法、様式でオリジナリティを獲得した。
最初は退屈な作品が続くのだが、その過程が必要だったと理解できる展示にしたのはうまかった。